一方、パウエル議長は記者会見で3月の会合で利下げを決める可能性は高くないと述べ、早期の利下げ期待をけん制しました。
FRBは30日から2日間、金融政策を決める会合を開きました。
声明では「インフレ率はこの1年で和らいでいるが依然として高い水準にあり、経済の先行きは不確かだ」と指摘しました。
そして政策金利を据え置くことを決定し、現在の5.25%から5.5%の幅を維持します。
FRBが金利を据え置くのは去年9月の会合以降、4会合連続となります。
一方で声明には「インフレ率が持続的に目標の2%に向かっていると確信できるまでは利下げは適切ではない」との文言を盛り込みました。
会合終了後の記者会見でFRBのパウエル議長は「現時点で勝利宣言をしておらずまだ道半ばだ。次回、3月の会合でメンバーが利下げが適切な時期だと確信するレベルに達するとは思わない」と述べ、3月に利下げを決める可能性は高くないとして市場で広がっていた早期の利下げ期待をけん制しました。
パウエル議長はこれまでの急速な利上げにもかかわらず、景気後退に陥らずに経済が堅調なことに自信を深めており、今後、一定程度時間をかけて金融政策の正常化を議論していく考えを示唆しました。
ダウ平均株価 300ドル超の値下がり
31日のニューヨーク株式市場はパウエル議長が3月の利下げの可能性は高くないとの見方を示したことで当面、高い金利水準が続くとの受け止めが広がり、ダウ平均株価は300ドルを超える値下がりとなりました。
31日のニューヨーク株式市場、ダウ平均株価はFRBのパウエル議長の記者会見を受けて値下がりし、終値は前日に比べて317ドル1セント安い3万8150ドル30セントでした。
パウエル議長は記者会見で3月の利下げの可能性は高くないと述べ、早期の利下げを期待していた市場をけん制しました。
投資家のあいだでは高い金利水準が当面、続くとの受け止めが広がって売り注文が増えました。
市場関係者は「パウエル議長がもっと利下げについて前向きに発言すると予想していた投資家が多かっただけに失望が広がり、株式を売る動きにつながった」と話しています。
また、ニューヨーク外国為替市場の円相場は一時、1ドル=146円台前半まで値上がりしたあと、パウエル議長の会見を受けて1ドル=147円台半ばまで値下がりするなど、利下げの時期をめぐる思惑で荒い値動きとなりました。
FRB 金融政策の経緯は
FRBが利上げを開始したのは2022年3月。
それまでのゼロ金利政策を解除して金融引き締めへと転換します。
金融引き締めによって景気を冷やすことでインフレを抑えこむねらいでした。
しかし、その後もインフレに収束の兆しは見えず、2022年6月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて9.1%の上昇と、およそ40年ぶりの記録的な水準となりました。
このためFRBは2022年6月から11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げに踏み切りました。
その後発表された消費者物価指数は上昇率が前の月を下回る傾向が続いたことなどから、FRBは2022年12月と、2023年1月31日と2月1日に開いた会合で、相次いで利上げ幅を縮小します。
しかし、これまでの急速な利上げの影響を受けて2023年3月から5月にかけては「シリコンバレーバンク」や「ファースト・リパブリック・バンク」など3つの銀行が経営破綻しました。
銀行が保有していた債券の価格が大きく下落したため売却を迫られて多額の損失を抱え経営への懸念が高まったことが要因でした。
こうした中でもFRBはインフレ抑制を優先にする姿勢を示し、2023年3月と5月にそれぞれ0.25%の利上げを決定。
2022年3月以降、利上げは10回連続となりました。
6月の会合では急速な利上げなどそれまでの金融政策の影響を評価するためなどとして利上げを見送りました。
利上げの見送りは2022年3月以降初めてでした。
一方、2023年7月の会合では、インフレの要因である人手不足が続いていることなどから0.25%の利上げを決定。
政策金利は5.25%から5.5%の幅と、2001年以来22年ぶりの高い水準となりました。
FRBの利上げはこれで2022年3月以降、あわせて11回に及びました。
その後、2023年9月から12月の会合では物価の上昇が落ち着き、インフレの要因となっていた人手不足に改善の兆しが見られることなどから3会合連続で利上げを見送っており、市場では利上げ局面は終了したとの見方が強まっていました。